もし、あなたが1週間まったく眠らずに過ごしたら、どうなるでしょうか?
集中力は落ち、判断力は低下し、体の回復も遅れます。
しかし、睡眠は単なる「休息」ではありません。
睡眠中、私たちの体では脳の整理、筋肉の修復、ホルモン調整、免疫機能の維持など、生命を守るための重要な作業が行われています。
本記事のポイント
睡眠は休止ではなく、修復・整理・調整の時間である。
睡眠が必要な理由
①脳を整理するため
人間の脳は、起きている間に膨大な情報を受け取っては処理しています。
人間の感覚器官には毎日膨大な情報が入ってきます。会話、仕事、勉強、感情、判断など。
脳はその中から重要な情報を選び、意識に上げて情報を処理しています。
一日の間に入ってきた情報を、そのまま保存していたら脳は混乱してしまいます。
そこで睡眠を取ることで
- 必要な記憶を整理する
- 不要な情報を整理する
- 学習した内容を定着させる
といった作業を行っています。
②体を修復するため

睡眠中、特に深い睡眠では成長ホルモンの分泌が増えます。
成長ホルモンときくと子どもだけのものに聞こえますが、そうではありません。
大人でも
- 筋肉の修復
- 骨や皮膚の維持
- 傷ついた組織の修復
といった事に関わっています。
研究では、一晩でも睡眠不足は筋肉を作る働き(筋肉タンパク質合成)を18%減少させ、ストレスに関わるコルチゾールを21%増加させ、筋肉の維持に関わるテストステロンを24%減少させたことがわかっています。
骨格筋タンパク質合成や筋肉の回復に関わるホルモン環境へ悪影響を及ぼす可能性が示されています。
睡眠不足が慢性化すると筋トレをしていてもなかなか筋肉が育たないことに繋がりかねないため、毎日の規則正しい睡眠は必要なことだと言えるでしょう。
筋肉修復までの流れ
筋トレ
↓
筋繊維への刺激
↓
栄養補給
↓
睡眠
↓
筋肉の修復・適応
③脳内の掃除をするため
近年、睡眠中の「グリンパティックシステム」という仕組みが注目されています。
脳内にある「間質空間」に流れる脳脊髄液が老廃物を運ぶという仕組みです。
睡眠中には「間質空間」が覚醒時よりも広がるということがマウスを使った実験で証明されています。

詳しくはこちら:「睡眠中に脳を掃除するグリンパティックシステムとは?」
脳の細胞と細胞の間(間質空間)には「間質液」が存在します。睡眠中には脳脊髄液が脳内へ流れ込み、間質液と交換・混合しながら老廃物の排出を助けると考えられています。
研究論文を読むと、マウスの睡眠中には間質空間が覚醒時と比較して約60%増加し、脳脊髄液と間質液の対流交換が著しく増加すると書かれています。
睡眠中では、覚醒時に蓄積する神経毒性を持つ可能性のある老廃物の除去が促進されることも証明されています。
最もこの研究は2013年に実験用マウスを使って行われたものであり、人間にも同じ仕組みがどの程度働いているのかはまだ研究途中となっています。
一言でまとめると、睡眠は「脳のゴミ出しの時間」とも表現できるのです。
グリンパティックシステム
脳脊髄液(CSF)
↓
間質空間
↓
間質液(ISF)と交換
↓
老廃物を排出
④ホルモンを整えるため
適切な睡眠時間で睡眠がとれていない場合、
食欲を促進するホルモン(グレリン)
満腹感に関するホルモン(レプチン)
のバランスが崩れて肥満につながる可能性があります。
その結果、
- 食欲が増える
- 高カロリー食品を欲しやすくなる
- 体重管理が難しくなる
ということが起こりやすくなります。
ウィスコンシン睡眠コホート研究が1989年から15年に渡って続けられた研究によると、睡眠時間とBMIにはU字型の関連があり、短時間睡眠だけではなく長時間睡眠でもBMI値が高かったと報告されています。ただしこれは「関連」を示した研究であり、睡眠時間そのものが肥満の原因となるかは証明されていません。
⑤免疫を維持するため
睡眠不足は免疫機能にも影響があります。
睡眠中には免疫細胞の働きが調整され、
- ウイルスなどへの防御
- 炎症反応の調整
に関わっています。
睡眠不足が続くと風邪を引きやすくなるという研究結果もあります。
まとめ

睡眠を取ることは単に疲れた体を休めるため、ではなく
- 脳内を整理する
- 体を修復する
- 脳内を掃除する
- ホルモンバランスを整える
- 免疫を維持する
といった複数の事柄を効率よく行うためのものだというのが最新科学での考え方となっています。
「なぜ睡眠は進化の過程で淘汰されなかったのか?」という問いに対しては、
睡眠中は外敵への警戒もできず、食事や活動もできません。それでも多くの生物が睡眠を必要としているのは、睡眠によって得られる回復や調整のメリットが、生存に欠かせないほど大きかったからだと考えられています。
と答えられるでしょう。
参考文献
1.Xie L, et al. Sleep drives metabolite clearance from the adult brain. Science. 2013.
「睡眠は成人の脳からの代謝物の除去を促進する」
「睡眠時間の短さは、レプチン減少、グレリン増加、および体格指数増加と関連している」
3.Cohen S, et al. Sleep habits and susceptibility to the common cold. Arch Intern Med. 2009.
「睡眠習慣と風邪への罹りやすさ」
「睡眠不足はアスリートの骨格筋損傷を引き起こす:有望な仮説」

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